2000年に日本で業務を開始したアマゾンジャパンが、日本でいくら納税したかがわかる年が1年だけある。2014年だ。
官報に、アマゾンジャパン株式会社とアマゾンジャパン・ロジスティクス株式会社の2014年12月期の決算公告が発表されている。
アマゾンジャパン株式会社の売上高は316億円強で、法人税が4億5000万円強。さらに、アマゾンジャパン・ロジスティクス株式会社の売上高は582億円で、法人税が6億円強。2社を合計すると、売上高が899億円強で、法人税が約10億8000万円──となる。
なぜ「アマゾンの納税額」は少ない?ここで、「おやっ!? ちょっと変だぞ」と気づいた方もいるだろう。「アマゾンの日本での売上高が、900億円弱というのは、数字が一桁少ないんじゃないのか」と。そう思った人は、かなりのアマゾン通である。
米アマゾンが発表する年次報告書によると、2014年の日本での売上高は79億1200万ドル(8700億円)と記載されている。米アマゾンの年次報告書の記載と比べると、決算公告に記載された売上高は、ほぼ10分の1に減少している。
法人税などの税金は、売上高から販売管理費などの諸経費を引いて最後に残った税引き前利益にかかるものだから、売上高が低くなれば、その分純利益も低くなり、納税額も低くなる。
アマゾンの年次報告書によると、8700億円の売上高を上げている日本において、納税額が10億8000万円に過ぎないというのだ。
単純計算とはいえ、売上高が8700億円となると、法人税額が、100億円を超える可能性もある。実際、同じような売上規模の小売業者である高島屋の法人税はこの年、136億円強に上る。また、日本の同業者である楽天は、同年の売上高は5985億円で税引き前利益が1042億円に対し、法人税は331億円を支払っている。
同業者の楽天と比べるとわかりやすい。楽天が、330億円を超える法人税を納税し、一方、アマゾンは10億円強の法人税を納税する。その差は320億円。アマゾンは、その差額を新しい事業の開発費用や、現行サービスの値引きの原資、さらには従業員の給与の支払いなどに使えるのだから、圧倒的に有利な条件で事業運営を進めることができる。
この決算公告を見て、私自身、「おやっ!」と思ったことがあった。2000年に事業を開始したアマゾンジャパンが、2014年の決算に「第17期決算」としていることである。2000年から決算をしているのなら、第15期決算になるはずだ。
そう思って、以前に取得していたアマゾンジャパンの登記簿を見返すと、アマゾンジャパン株式会社の設立は、「平成10(1998)年9月24日」と書いてある。業務開始は2000年からだが、しかし決算は1998年から始めていたのだ。だから、同社にとって2014年が「第17期」の決算となるわけだ。うっかり見逃すところだった。
アマゾンが使う「巧妙なトリック」アマゾンジャパンが決算公告で発表している899億円と、米アマゾンが年次報告書で発表している8700億円の差異はどうやって生まれるのか。
財務省出身で、現在は東京財団で研究主幹を務める森信茂樹はこう話す。
「アメリカ本社と日本法人の間におけるアマゾンの税制のスキームは、コミッショネア契約と呼ばれています。コミッショネア契約とは、本来なら、アマゾン本社が行う日本国内での物流業務などの補助的な業務を日本法人が代行することに対し、アマゾン本社が日本法人に委託手数料を支払うという意味です。
仮にアメリカ本社が日本法人に全売上高の10%を手数料として払っているとすると、決算公告と年次報告書の差額が説明できます。このスキームを使えば、日本法人の売上高と法人税を大きく圧縮できます」
アマゾンのような国際企業から税金を正しく徴収するには、国税庁が、その企業が各国にどのような拠点があり、どんな機能があり、その拠点や機能によってどれだけの収益を上げているのかを、正確に把握する必要がある。しかも、そうした情報を得たうえで、他国の徴税機関、この場合、アメリカのIRS(内国歳入庁)との交渉に打ち勝つ必要がある。
さらに厄介なのは、アマゾンのような国際企業にとって決算数字の付け替えは、いかようにもできるという点だ。アメリカ本社に集めた日本からの知的財産の使用料を、アメリカ国内の租税回避地である、デラウェア州などで処理されれば、低額の納税で済ませることができる。
その実態は、アマゾンと各国の税務担当局のみが知りえる。その実態は守秘義務に守られ、その詳細が外部に流出することはない。
アマゾンジャパンの租税回避について、追及した国会議員が1人いる。自民党の参議院議員である三原じゅん子だ。2014年3月と2015年3月の参議院予算委員会で、この問題について質問している。
「(アマゾンジャパンは)日本でのシステム運営と顧客サービスを担当しているにすぎないのであって、販売を行っているわけではない、販売しているのはあくまでもアメリカ法人であるから法人税はアメリカに支払うというものです。これはアマゾンの領収書でも確認することができます。/国税庁に伺います。アマゾンのわが国での売り上げと納税額を教えてください」(2014年3月19日の予算委員会議事録)
それに対する国税庁の答えは、「アマゾンの日本における売上額と納税額について御下問ありましたけれども、申し訳ありません、個別の事項についてはお答えを差し控えさせていただきたいと存じます」というものだった。
「税金対策のプロ」を80人そろえる租税回避という言葉がある。アマゾンなどの国際IT企業が、世界中に遍在するタックス・ヘイブンという低課税地域や、各国の税法の抜け穴などを巧妙に組み合わせ、納税額を少しでも減らそうとする節税手段だ。そうした国際IT企業などでは、百人前後の大人数の税制度の専門家をスタッフとして抱え、租税回避へと邁進する。
『ジェフ・ベゾス 果てなき野望』によると、米アマゾンにも80人からなる税金対策部がある。会計や法律の専門家である彼らは、その知識を駆使し、アマゾンが払う税金が少しでも安くなるように知恵を絞り、その見返りとして高額の給与を手にする。
租税回避は、違法行為である脱税とは違い、一応、法律の条件は満たしているのだが、その目的は、各国の税制に従って正しく納税するということではなく、各国の税制の抜け穴を積極的に探し、合法的に納税を逃れることに全力を尽くすことにある。
出典
アマゾンの納税額が楽天より圧倒的に低い理由(東洋経済オンライン)
https://toyokeizai.net/articles/-/308929
posted by かっちゃん2.0@名古屋 at 00:01|
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